表面処理
表面処理とは、機械工学等の分野においては、めっきや塗装など、素材表面の性質を高めるために行われる機械工作法の一種である。硬さや耐摩耗性、潤滑性、耐食性、耐酸化性、耐熱性、断熱性、絶縁性、密着性、および、装飾性や美観など、これらの性質のいくつかを向上させることを主要な目的として施される。
参考写真:台湾CMCの協力工場のメッキ工場

メッキの種類 | 説明 |
電気めっき | ①銅めっき 銅は、塩素を含んだ水に簡単に侵される。従って、装飾では銅単独で用いる事はほとんどない。ニッケルあるいはニッケルクロームめっきの下地めっきとして利用される。一方、工業用の銅めっきは、その電極性及び均一電着性の特徴を広く利用されている。 ②ニッケルめっき 水溶液中で通電による電子の還元力により、被めっき物に金属ニッケル皮膜を作成する表面処理の一種である。被めっき物は通電可能であること、つまり電気を通すものであることが電解ニッケルめっきの条件である。電解ニッケルめっきの主な目的は装飾、機能、電鋳である ③黒色ニッケルめっき 黒色ニッケルめっきは主に装飾に利用されるが、太陽光選択吸収皮膜として利用されることもある。黒色ニッケルめっき浴の特徴は、金属イオンとしてニッケルの他に亜鉛が含まれていることである。浴に含まれる亜鉛イオンはめっき皮膜に共析するので、黒色ニッケルめっきは厳密には「ニッケル・亜鉛合金めっき」である。黒色ニッケルめっきは光沢が無く、もろいため厚付けめっきには適さず、膜厚2μm程度が限度である。 ④クロムめっき クロムは、磨くと高度の光沢が得られ、また硬さが大であり耐磨耗性、耐食性、耐熱性、密着性が良く、広く工業用に使用されている。めっきの最上層に施される薄いクロムめっきは、装飾用のクロムめっきであり、特有の深みを有する色調が、あらゆる部品の最終仕上げとして利用されている。 ⑤黒色クロムめっき 主な薬品である無水クロム酸を化学反応(酸化反応)させて黒色にするめっきである。 通常のシルバークロムめっきと同様に、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、外観に優れているが、ムラや傷が目立ちやすく高度な技術が必要である。 膜厚を0.1〜10μmと薄く処理をする方法が一般的である。 ⑥工業用(硬質)めっき 多くの機械的特性をもつ代表的な工業用めっきである。使用目的が装飾以外のもので比較的厚い(JISでは5μm以上規定)めっきをいう。素地に直接、密着性の良い分厚いめっきを施す、というのが要求される基本的条件である。そのため、めっき前後の工数を煩わすものと成る。 ⑦亜鉛めっき 亜鉛めっきは、主に鉄素地の錆止めに広く用いられる。めっき後のクロメート処理によって亜鉛表面の耐食性が増し、外観の美しさが備わる。 ⑧カドミウムめっき 防食を目的として鉄鋼上に施すめっき。同様の目的でなされる亜鉛めっきに比べて、高温多湿の環境中および塩化物を含む環境中での耐食性に優れ、海上あるいは海浜で使用される機器へのめっきとして適する。しかし、カドミウムは毒性が高く公害上問題があること、鉄鋼素地に水素脆性(ぜいせい)を生じさせやすいこと、などの欠点があり、今日では特殊な用途以外は亜鉛めっきに置き換えられている。 ⑨錫めっき 近年になって酸性浴の有機光沢剤が開発され、光沢性、はんだ付け性、防食性の優れた光沢めっきが得られるようになってからは、電子部品のめっきに注目されている。 ⑩金めっき 金属材料の表面に薄い金の層を付着させること、また付着させたものをいう。従来装飾に用いられてきたが、耐食性がきわめて高く、電気抵抗が小さく、はんだ付け性がよい、などの優れた特性により、最近では電気接点、コネクター、プリント基板などとして、高い信頼性を必要とする電子部品に適用されている。 ⑪銀めっき 金属材料の表面に薄い銀の層を付着させること、また付着した銀の薄層をいう。美しい外観、優れた耐食性、高い反射率、大きな電導度、金よりも安価なこと、などの特長により、装飾品、反射鏡、電気・電子機器部品、精密機械部品、洋食器などへのめっきとして広く用いられている。 |
無電解めっき | ①無電解ニッケルめっき 電気めっきとは異なり、通電による電子ではなく、めっき液に含まれる還元剤の酸化によって放出される電子により、液に含浸することで被めっき物に金属ニッケル皮膜を析出させる無電解めっきの一種である。このめっき方法はカニゼンめっきとも呼ばれる。電気めっきのように通電を必要としないため、プラスチックやセラミックスのような不導体にもめっき可能である。素材の形状や種類にかかわらず均一な厚みの皮膜が得られる。 ②プラスチックめっき 汎用性から機能性に至るまで、様々な特性をもったプラスチックスが工業化され、広範囲な用途に供されている。成形技術の急速な進歩により、かなり複雑な形状の品物でも量産化が可能のため、軽量化、低コストと相まって、その用途は限りなく広がっている。プラスチックスは、塗装やメタリック仕上げホットスタンピング等各種の表面処理や成形技術によって、多彩な外観が付与されているが、プラスチックスを金属化(無電解めっき→電解めっき)して、商品価値を飛躍的に向上させうる最適な方法はプラスチックめっきといえる。 |
化成処理と着色 | ①クロメート処理 主に、黄銅、亜鉛、アルミニウムなどに行われる。素材金属を六価クロムを含む溶液に浸漬し不動態化させることで、自己修復性の皮膜を得ながら、なおかつ化学研磨作用を同時に行うことが出来る。 ②古美処理 銅・銅合金めっきなどの表面を硫化処理などで黒色系の着色を行い、バフ研磨でそれを部分的に除去して美観を与えるものであります。黒の濃淡やぼかしの色調がめっきの赤色などと調和して、アンチックな雰囲気をかもしだすのが特徴であります。 ③パーカーライジング 表面に不溶性のリン酸塩皮膜を作り表面の腐食の進行を抑えるために行う。塗装前の鉄製品にたいしても行われる。 腐食を抑える表面保護効果のほかに、塑性加工時の金属石鹸系潤滑剤の下地処理用途としても用いられる。この目的にはリン酸カルシウムなどが多く使われ添加物の使用、液温を制御したリン酸塩溶液を用い、さらに化成処理時間を調整することによって皮膜の性質を変化させることができる。 ④黒染め 鉄鋼表面にFe3O4(四三酸化鉄)の黒色の酸化皮膜を作り、その緻密な膜で内部を保護する方法です。種々の方法がありますが、アルカリ着色法は、NaOH35〜45%の水溶液に酸化剤、反応促進剤などを加えた処理液を130〜150℃に加熱して、その中に鉄鋼部品を浸漬します。皮膜の厚さは、0.2〜1μm位で、表面から内部に化成されるため寸法変化が小さいので精密機器部品の処理に用いられるが、この皮膜はクラックの発生が多く、後処理としてクロム酸処理、防錆油塗布などの処理が必要です。 |
キリンス | 銅材に多用される酸洗処理で、非常に綺麗な表面を得ることが出来る。通常、硝酸をベースとした強酸の混合液へ浸せき、汚れた表面を溶解し新しい 銅表面を露出させ光沢を得ます。処理の際、多量の窒素酸化物が発生するため処理は減る方向にあります。 |
溶融めっき | 溶融金属中に被処理材を浸したのち引き上げて表面に金属被覆を形成させる方法で,どぶ漬などとも呼ばれる。被処理材が加熱による変質を受ける温度よりも低い融点の金属しかめっきできない。めっき金属としてはアルミニウム,スズ,亜鉛,鉛などが用いられる。とくに溶融亜鉛めっきは鉄鋼材料の防食の目的に広く用いられ,ガルバナイジングと呼ばれる。管,線,板,形材など,さまざまな形状のものが処理される。 |
塗装 | 金属加工における塗装の目的は、酸化しやすい金属素材を大気から遮断して錆を防ぐこと、塗膜の持つ弾性により表面を保護すること、美観のための着色など様々であり、かつ複数の目的を持つ場合が多い。塗料の構成は、塗膜形成主要素、塗膜形成助要素、顔料、溶剤に分けられ、このうち顔料とは着色を目的に加えられる、溶剤に不溶性の微粉末である。顔料は成分により着色のほか錆止め、導電性の付与、機械的性質の改善なども行える。このように、塗膜に美観や保護以外の機能を加えて使用する塗料を特に機能性塗料とも呼んでいる。塗膜形成主要素は、塗料の主成分であり天然樹脂・油から各種合成樹脂・油ヘ切り替わりつつある。塗膜形成助要素は、可塑剤、乾燥剤、増粘剤などの添加剤であり、主要素の性質を補う目的で使用される。溶剤は塗膜形成要素を溶解又は分散させて流動させるための成分であり、有機溶剤や水が使用される。 |
コーティング | 有機高分子材料、無機質材料で金属等を被覆させるもので、流動浸漬、スプレー溶射、静電、吹き付けなどがあり、いずれも数十~数百μmのプラスチック粉末を、①金属に付着後、溶融、②加熱金属に接触、溶融、③半溶融状態でコーティングという方法の単独または、組合せで施工せれる事が多い。 |
参考写真:台湾CMCの協力工場のメッキ工場

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